#2 初舞台(マンハント)

2 行動派ミステリィの顔

5 秋の夜長はベッドの上で

 

ベッドはだいじ

 

 今回は秋の夜長にちなんで、ベッドのあるカバー・ピクチュア(*1)をおつまみに話をすることにします。

《マンハント》9月号(*2)で小道具としてのべッドのお話をちょっといたしました。表紙の1/8以上に登場し、小道具としては、重要な役割りをはたしているベッド。

 今回は、ペイパー・バック(*3)本のなかから、ランダムにえらんだ60冊のベッドのあるカバー・ピクチュアを、いろいろな角度からながめてみることにいたします。

 出版社別の頻度数はほぼ同じですが、大手6社にくらべて、中・小ペイパー・バック本出版社にやや多くみられます。

 ベッドと登場人物の関連ですが、やはりベッドは男女で使うもの、男女各1名が半数以上(53%)を占めています。

 ベッドを背景に一組の男女が何をしているかって? それは聞くだけヤボというもの。

 その道の達人シェル・スコットに登場してもらいましょう。

 

「コリーンの柔肌(やわはだ)は、熱っぽくうずいていた。勝手に想像していた以上のメーターのあがりかた。吸いついていた唇をはなし、頭をのけぞらす。ハスキー・ボイスがくすぐったい。どうも、おれの名前をささやいているらしい。

 可愛いのどくびのくぼみに、唇が自然と吸いよせられる。白いのどもとを通してアッツい血潮がコトコトひびく。

 あえぎあえぎ、おれの唇がコリーンのはちきれそうなオッパイにすりよる。コリーンは、おれよりずっと燃えていた。ぐっと、おれを引きよせたかとおもうと、あわれ、おれのお面はすっぽりと、ふたつの小山の谷間にうずまってしまった。

 ぐいぐいオッパイをおしつけながらコリーンのささやき声。

「ねえ、シェル。私の可愛いシェル。大好きなシェル。愛してちょうだい、ねえ」

 石佃会社のコマーシャルじゃあるまいし、シェル、シェルっていつまでもつづくささやきが終るのをまたずに、おれは軽々とコリーンを腕に抱きかかえていた。

 真暗な寝室のベッド。そっとコリーンをその上に横たえた」

 

 シェル・スコットが、コリーンとかいう女性を横たえたべッドがどんなベッドだったかは書いてありません。もっぱら実践と行動を尊ぶわれらがシェル・スコットにその先をつづけてもらうことにしましょう。

 

「挑むように大きく開き輝やく(*4)コリーンの眼。ゆっくりと横におれが寝そべると、急に息づかいが荒々しくなる。まさに“唇によだれ”てな具合。

 おれの指がビロードの服にかかる。

「ちょっと待って」

 〽︎いまさら何の赤信号、思うまもなく、あっさりと、緑のガウンがするすると、音もたてずに、舞いおちる。――汽笛一声のメロデイにのせて、内マタをすべって床におちたガウン。その下はなにもなかった。いや、あるにはあった。正真正銘、かけ値なしのコリーンのすべて。ちっちゃなパンティに手をあてがった裸のコリーン。

 そっとからみついていた指さきに、がぜん力がぐっとこもる。おれの愛撫にこたえて、真白な手がほんわかとおれの背をなでさする。

「愛して、愛して……」

 コリーンは、何度もささやいた。愛して、にもいろんな意味がある。ことここにいたった場合の愛しての意味がわからないやつは、トンチキヤローだ。

 唇には唇を、これしかコリーンのささやきをとめる手はない。

 からだ中にしみわたる快感を楽しんでいるのか、しばらく彼女は、じっとしていた。だが、息づかいはますます波立ってくるばかり。白いのどくび、はちきれそうなオッパイ、おれの唇は礼儀正しく順をおって進軍する。何とか報告にのっとって、おれの指先はもっぱら内マタの柔らかなところ、腰からヒップにかけての豊かなカーブをピアニストより情熱的にひきまくった。

 狂ったけもののように、コリーンは肩に爪をたて、歯でおれの唇をかみ、からだをおしつけてきた。

 おれの指先はあいかわらず、豊満な女体のカーブの上をさまよいつづけた。熟練した舌先の愛撫が、おれのペースをちょっぴり狂わせた。

 コリーンの指は、おれのからだをところかまわずなでさすり、もみくだき、とろんととかしていった。おれもお返しをしてやった。

〝もうどうなってもいいの〟てな風情で、コリーンはからだをよじりくねらせる。大切なところをかくしている最後の一片、可愛いいちっちゃなパンティにおれの指がかかる。パンティをはずしかけながら指先が、すっとその奥にのびかかったとき、ついにコリーンは身も世もあらぬかすれ声でささやいた。「ねえ、シェル、今、はやくはやく」

――R. S. Prather “Find This Woman”(*5)

 

 ここから先は、あいにくなことにカット。泣く子もだまるシェル・スコットの重量にたえかねて、さぞやベッドもタエなる音をたてたことでしょう。

 


 

ベッドをバックに

 

 このように、ベッドはやはりベッド本来の役目をはたしています。男女一組がべッドを背景に登場するカバー・ピクチユアの半数が、ラブシーン(*6)で占められているからです。

男女各1名についで多いのは女性ひとりのもので(40%)、そのなかには、カット写真にもあるように、男もののアクセサリーを配してべッド・シーンのあとを連想させるものや、男を待つ魅力的な女性、あるいは無惨な死体などが含まれています。

 べッド・シーンに登場する人物配置は、このふたつの類型のほかは少なく、男ひとり、女ふたりの例が一、二ある程度です。

 男ひとりのほうは監獄の独房のシーン、女ふたりの例は同性愛がおとくいのヴィン・パッカーの作品です。独房の表紙を除いてベッドのある表紙の総数60のうち59までに女性が登場しています。

 女性の表情をみてみますと、男を招くがごとく、いどむがごとく、まことに魅惑的・誘惑的なものが半数以上を占め、つぎに苦悩・恐怖を顔に浮かべているものがつづいています。

 9月号のデータでは、男の死体のほうがカバー・ピクチュアにはよく用いられる結果がでていましたが、ベッド・ルームとの配置では女性の死体がずっと多く7割以上を占めています。

 ラヴ・シーンのあとに甘いお別れがつづくとはかぎらぬもので、みにくい痴話ゲンカやベッドを背景に争う男女の表紙もあります。

 ピストルは60例中12例(20%)にみられ、所持者は男女半々でした。

 最後に服装についてみてみましょう。比較の意味で9月号に500例を対象にして計算した%をカッコ内に記してみました。

 今回ベッドのあるカバー・ピクチュアとして選んだ60例中、女性なしが1.6%(7.4%)正装女性6.7%(23.2%)半裸または略装の女性が76.7%(61.2%)全裸の女性は15.0%(8.2%)の結果となりました。比較してみますとその差は明白です。

 正装女性が1/4に減り、半裸の女性が2割以上まし、全裸の女性は倍ちかくになっています。

〝女性はべッドで脱ぎたがる〟これは公理ともいえましょう。

 

 

ベッド入りのタイトル

 

《マンハント》にもがっちりした中篇を書いているカリフォルニア在のサム・S・テーラー(*7)の作品に登場するおやさしいニール・コットンという名前の私立探偵は、ベッド・ルームがお好きとみえて “Sleep No more” (*8)“No Head for Her Pillow” (*9)“So cold, My Bed”(*10) と、眠り、枕、ベッドの三部作に活躍しています。

 そのものスバリ、ベッドのはいったタイトルは、つけにくいのか、多くはありません。

 いまでたS・S・テーラーの『冷たきわがしとね』、E・ボックスの『お休み前の死』(Death before Bedtime)、D・キーンがピラミッドから出した『ベッドの上の死』(Death on Bed)(編注・Day Keene でDeath on Bed という作品は小鷹文庫に見当たらない。Dead in Bed?)E・バークマンのスリラー『見知らぬ同衾者』(The Strange Bedfellow)といったところです。

 シェル・スコットものにも、“Bodies in Bedlam” というものがありますが、ベッドラムはテンカン病院とかランチキ騒ぎとかいう意味なので(*11)、ベッドとは別ものです。

 寝るにしろ、眠るにしろ、ベッドは「ねる」ところ。 “Sleep” の使われているタイトルも二、三あります。

『お休み、ジェニィ』(Go to Sleep Jannie T・B・デューイ)(*12)なんてのは愛妻家の私立探偵ピート・スコーンフィールド(*13)の面目躍如なタイトルですが、『それ以上眠るな』(前出・S・S・テーラー(*14))とかひどいのになるとそれに似たタイトルで『それ以上息をするな』(Breathe No More, My Lady  E・レイシイ)なんてのもあります。

 このエド・レイシイは最近また《マンハント》に中篇や短篇を書いています。

『見知らぬものと眠れ』(Sleep with Strangers D・ヒッチェンズ)なんておだやかでないタイトルもあります。

 忘れちゃもったいない大物はR・チャンドラーの“Big Sleep” (編注・小鷹文庫では The Big Sleep)で、『大いなる眠り』とはうまい日本題名です。

 ねるのはなにも夜とは限りませんが、睡眠と関連してもっともよく使われるタイトルは、Nightでしょう。

『ノラとの一夜』 One Nihgt With Nora(*15) (B・ハリデイ)

『夜を徹して(非常線)(*16)』All Through the Night(A Cry in the Night) (W・マスタースン)

『夜間勤務』 Night Quad(*17)(D・グディス)

『夜間監視』(*18)Night Watch(編注・小鷹文庫では The Night Watch)(T・ウォルシュ)

『第二の長い夜』(*19)Second Longest Night(S・マーロウ)チエスター(編注・チェスター?)・ドラムの第一作。

『夜よ来い、悪よ来い』(Come Night Come Evil(J・クレイグ)

『夜歩くもの』Nightwalkers(編注・小鷹文庫では The Nightwalkers)(B・クロス)

『夜さまようもの』Prowler in the Night(J・マッチヤ)

『夜に祈る』(*20)Prey by Night(M・ダグラス)処女作。

『夜の終りに』To End the Night(A・ゲイピィ)

『夜の貴婦人』Night Lady(B・ゴールト)

『夜陰のリング』Nightshade Ring(編注・小鷹文庫では The Nightshade Ring)(L・ハーディ)

『深夜緊急版』(*21)Night Extra(M・P・マッギバーン)(*22)

『寂しい夜の出来事』One Lonely Night(M・スピレイン)

『夜の叫び』Let’s the Night(*23)(C・ウェルズ)

『夜は叫ぶもの』The Night is for Screaming(編注・小鷹文庫ではNight Is for Screaming)(R・ターナー)

『夜の熱気』Heat of Night(H・ホィッティントン)

『土曜の夜の町』Saturday Night Town(H・ホィッティントン)

『夜の悪』Evil in the Night(J・クレイトン)

『夜のために』Yield to the Night(J・カーニイ)悪徳警官ものがとくいの作家。

 夜だけでもざっと20ほどありますが、このほかにも悪夢〝Nightmare〟のはいったもの、(『マンハッタンの悪夢』T・ウォルシュ、『駆ける悪夢』(*24)R・マシスン、『長い悪夢』T・B・デューイとJ・ローバートに同名作品(*25))、深夜〝Midnight〟のつくもの(『真夜中からの数時間』J・ヘイズ、『真夜中の眼』M・ロスコー(*26))などがあります。

 いくら秋の夜長といっても、これだけNightがあったのではくわしく紹介しきれないので、オピッド・デマリス(*27)の『長い夜』The Long Nightのお話をしましょう。

 

 

『長い夜』の私立探偵

 

 O・デマリスが59年にエイボン(*28)で発表したこの作品の興味は、ストーリーより主人公の私立探偵ヴィンス・スレイダーの性格描写にあるといえます。

 

「遊びに来たんじゃない。おれは女とねたいときは金をはらってすませるよ」

「それで気がすむなら、そうしてちょうだい。私はかまわないわよ」

「おれはかまうね」

「たった2ドルでも?」

 あっというまに彼女はおれのひざの上にのって強烈なネッキングを開始。こうなったら観念するしかない。

 おれの上にまたがると彼女は、ひざを脚の間におしいれて顔にまともに乳房をおしつけ身をくねらせる。スカートの下に手をすべりこませると、つるつるのヒップに向かっておれは内股にそっと手を撫であげていった。

 済ませたあと、キスをしながら彼女いわく。

「2ドルよ」

「誰が誰にはらうんだい」

 彼女はまた、おれのはだかのからだを愛撫しはじめた。

「もう十分だ」

「ねえ、今度は私がはらうわ」

「今度は仕事の話だよ」

「いやな人ね、あんたって」

 

 これは、冒頭でスレイダーが訪ねていった相手との濃厚なラブ・シーンですが、全篇を通して、彼は3人の女性にでくわします。

 ひとりはいまの女性、2番めはむかし別れた妻です。このいきさつはカート・キャノンとそっくりで、やくざと妻が情事にふけっている現場にのりこんで男を片輪にし、妻をおいだしてしまいます。そのときの間男にいつまでもつけねらわれ、みじめに転落していった妻とは淫売屋ではからずも出会うといったおぜん立てです。

 第3の女は抽象画に青春を費やしたオールドミスの美術家、生命をたすけられたこの女性とアワい恋を語るようになったスレイダーが、すべてを許した女体を前にしてためらうあたり、ハードーボイルドにはめずらしいメロドラマ調です。

 スレイダーの訪問の目的は、賭け金の取り立て。実はこれが罠なのですが、私立探偵がシンジケートの手先となったり、淫売屋にでかけたりと、これが現実の私立探偵の実態なのでしょうが、かなりリアルにかけています。

 私立探偵と犯罪組織のくされ縁を追及する委員会がひらかれ、その聴問会でスレイダーがさんざんイヤミを浴せかけられるあたり、いくらか私立探偵業への批判がみられて興味があります。

 この聴聞会での非難に対する弁護は、後半スレイダーの活躍を通してなされますが、3人の女性との関係で語られる道徳観・女性観が、この作品をおもしろくしているといえるでしょう。

 緊張のあまり思わず尿をもらすシーンがおとくいということで、前回、東の大藪、西のデマリスとヒヤカしましたが、この作品でもまた、同じような、あまりきれいじゃない場面があります。

 

「ヴィンス、お願いだ。銃口を向けるのはやめてくれ」男は泣きだす一歩手前。

「いいや、殺してやる」彼は無情にいった。

「きたならしい下司野郎!」

男のベッドにねていたあばずれが、そう叫ぶとベッドからはだかのままとびだした。

「こっちへ戻るんだ」

「いやよ。この汚ない男ったらベッド中をおしっこだらけにしてるんだもん」

「ベッドの端に坐っておとなしくしてろ。いいっていうまで動くんじゃないぞ」

 

と、こんな具合です。

 ヴィンス・スレイダーを紹介したついでに、もうひとり新しい私立探偵のお話をしておきましょう。

 

ダンカン君登場

 

 〝ソファーもベッドのうちよ〟てな顔をしてぴったりしたセーターを脱ぎかかっているお姐ちゃんに毒気をぬかれた顔をしているのは、アンドリユー・フレイザー(*29)つくるところの私立探偵ダンカン・プライド君です。

 彼氏、もとオール・アメリカンのハーフ・バックに選ばれたこともある若手の私立探偵で、初登場が59年の『アイリーン・ハーディンをみつけろ!』、ついで60年に『マーテイ・ムーンの転落』(*30)、いずれもエイボンからでています。このペースでいけば、そろそろ第3作も間じか(*31)でしょう。

 フットボール選手出身の私立探偵には、B・ゴールドのブロック・キャラハンもいますが、プライドのほうは、もっぱら失踪人探がし(*32)が本職です。

 表紙にべッドの女性が登場すること、タイトルに人名がついていること、失踪人探がしのプロットであることが共通していますが、依頼者も2作ともフットボールに関係しています。

 第1作は大学時代のチームのコーチに、失踪した娘の行方を探がしてくれと依頼されるところからはじまります。訪れたバーディン家の女主人は、娘の失踪と酒びたりの夫への失望から、たくましい男の胸に顔をうずめてさめざめと泣きたい御心境。そこに到来したダンカン君こそいいツラの皮。

 折悪しく旦那とバッタリ顔があい、「妻よお前もか。ちょっと目をはなすと、娘ばかりで、なく、今度は……。このオール・アメリカンの下司野郎め!」とののしられるハメになってしまいます。

 コール・ガールになっている18歳の娘アイリーンの行方を追ううちに、お定まりの売春組織、麻薬シンジケートと悪徳のなわばりにまきこまれてしまうお話です。

 第2作の依頼者は選手時代の古いなじみ、スポーツ界のボス、マーティ・ムーンの娘でした。第1作では父が娘を、第2作は娘が父を見つけてくれと頼んでいるわけです。

 6年前に大学を卒業したばかりですから、この私立探偵はベテランぞろいのなかではまだまだ若造ですが、さきの活躍が期待されます。

“Private Eye”,“Private Investigator” など私立探偵の呼び方については前回もすこしふれました。

 P.I.はインヴェスティゲイター、あるいはアイ(*33)の省略形、もじりと思われます。前回、淫売屋の主人(*34)(Pimpの略)とまちがえられるからあまり使わないほうがいいと書きましたが、P.I.はもちろん現在ひろく使われている省略形であるにはちがいありません。

 私立探偵の呼称はこのほか、”Private Cop”とか、”Private Richard”(リチャードの愛称がDick)”Shamus”(シェル・スコットものなどによくでてきます)などが、ポピュラーなものです。

 物音をたてないようにいつもラバーソールの靴を着用しているところから、”Gumshoe”と呼ばれたり、”Keyhole Peeper” ” Snoop(Snooper)”など、職性をやや軽蔑的にもじった名称もあります。

 日本語には、私立探偵か秘密調査員ぐらいの呼び名しかないのに、さすがは本家だけのことはあって、なかなかウガった呼び名をつけています。

    ★

 テーブルの電話が、かん高く調子はずれの音をひびかせた。

 ジョニイ・リデル(*35)はうめき声をひとつ立てると、口のなかでなにかブツブツいいながら、枕に頭をうずめた。ベルは鳴りやまない。

 半開きのブラインドから、うすぐらい外を片眼でのぞく。いくら眼をこすっても睡気(*36)はさらない。

 電話のベルは根気よく鳴りつづける。とうとうリデルは受話器に手をのばした。

「なんだ」と眠たげにつぶやく。

   〈マンハント〉本国版54年8月号「罠」(未訳)(*37)

 

 こういったファースト・シーンは、私立探偵ものではおなじみのものです。

 くたくたのからだを横たえるベッドの上だけが、私立探偵の唯一の私生活でしょうに、無情に彼のプライバシーをおびやかす電話のベル。

 依頼人の電話にたたきおこされるところからはじまる私立探偵の長い一日。

 彼らのために、足を棒にして働きまわる短かい(*38)昼と長い夜。疲労しきったからだをやっとベッドに横たえるのは、正常人が勤めにでかける早朝のことでしょう。

 長い一日が終り、私立探偵たちが眠りについたところで私の話もおわることにいたします。

 

 

 

*出典 『マンハント』1961年12月号

 

 

[校訂]

*1:カバー・ビクチュア → カヴァー・ピクチャー

*2:9月号 → 1961年9月号

*3:ペイパー・パック → ペイパーバック

*4:輝やく → 輝く

*5:Find This Woman →『傷のある女』

*6:ラブシーン → ラヴ・シーン

*7:サム・S・テーラー(テイラー)

*8:Sleep No more → Sleep No More

*9:No Head for Her Pillow → 『首を捜せ』

*10:So cold, My Bed → So Cold, My Bed

*11:「ベドラム」とは「精神病院」の意味。ロンドンの「べドラム精神病院」が語源。

*12:『お休み、ジェニィ』(Go to Sleep Jannie →『お休み、ジーニー』(Go to Sleep, Jeannie)

*13:ピート・スコーンフィールド(スコフィールド)

*14:S・S・テーラー(S・S・テイラー)

*15:One Nihgt With Nora → One Night with Nora

*16:『夜を徹して(非常線)』→『非常線』(「夜を徹して」は仮題)

*17:『夜間勤務』Night Quad →『深夜特捜隊』Night Squad

*18:『夜間監視』→『深夜の張り込み』

*19:『第二の長い夜』→「二番目に長い夜」という意味

*20:『夜に祈る』→ 「夜に捕獲する」いう意味(pray と prey は同じ発音)

*21:『深夜緊急版』→『緊急深夜版』

*22:M・P・マッギバーン(W・P・マッギヴァーン)

*23:Let’s the Night → Let the Night Cry

*24:『駆ける悪夢』→『夜の訪問者』(小鷹信光訳)

*25:同名作品 → T・B・デューイにThe Long Nightmare というタイトルの作品はない。

*26:M・ロスコー(ロスコオ)

*27:オピッド(オヴィッド)・デマリス

*28:エイボン → エイヴォン

*29:アンドリユー(アンドリュー)・フレイザー →[フレイザーはスティーヴン・マーロウのペンネーム]

*30:マーテイ → マーティ[原題が The Fall of Marty Moon なので]

*31:間じか → 間ぢか

*32:失踪人探がし → 失踪人探し

*33:インヴェスティゲイター、あるいはアイ → プライヴェイト・インヴェスティゲイター、あるいはプライヴェイト・アイ

*34:淫売屋の主人 → ポン引き

*35:ジョニイ(ジョニー)・リデル

*36:睡気 → 眠気

*37:「罠」(未訳)→[のちに、日本版1962年8月号にフランク・ケイン作「人を呪わば罠ふたつ」として訳載]

*38:短かい → 短い

 

 

 

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