ーー以前読んだ文章に、「まず、そもそも私がハードボイルドという言葉を知ったのは、亡くなった映画評論家双葉十三郎さんの映画評だった。『マルタの鷹』を知ったのは、原書でも翻訳書でもなくヒューストン/ボガードの映画『マルタの鷹』だった。すべては1940年代のモノクロのアメリカン・ノワールから始まったのである」とありました。やはり、敗戦後の日本を席卷した感のある「アメリカ文化の台頭」がご自身に与えた影響は大きかったのでしょうか?敗戦後の日本で、アメリカ映画及びアメリカ文化全般に「目覚めた」コトが、ハードボイルドの目覚めたことのきっかけだったのですね。
小鷹 おっしゃる通りです。じつはこういう影響はフランスでも戦後すぐに顕著にあらわれました。第二次世界大戦による文化交流の空白期間が一気に狭められ、フィルム・ノワールが台頭したのです。ハードボイルドとフィルム・ノワールは異母兄弟のようなものですから。
ーーペンネームの由来も、当然『マルタの鷹』なんですよね?
小鷹 おもてむきはその通りです。『大鷹』ではおそれ多いので『小鷹』。でもほんとうにここだけの話だけど、じつを言うと家内の愛称(おたか)からとったんです。
*出典 『In The City』2015 summer Vol.13(ビームス発行)「小鷹信光ペーパーバック・ギャラリー」p36
▶︎7 ノワール古典映画のライナーノートから